木の位置を記録しながら、林の中を歩いていました。足元の草むらに茶色の塊があるのに気がつきます。もうちょっとで靴の下敷きにしてしまうところでした
。それほど近かったのです。よくわからないので、しゃがんで見てみると、耳があって、鼻もあって、白い斑点があって……。

バンビ!
子ジカが丸まっていたのです。死んでいるのかと思いました。でも、体は動いています。ちゃんと息をしているようでした。薄目でぼんやりこちらを見ています。鹿の子模様がきれいです。どこからか母ジカが心配そうにこちらをうかがっているかもしれません。体当たりしてきたら、それこそ一大事です。思わずあたりを見渡してしまいました。
いる気配はありません。驚かしてはいけないので、写真を何枚か撮って、その場を離れました。すこし遠くからでは、もうどこかさえわかりません。保護色で完全に溶けこんでいます。知らぬ間に踏んでしまっても、おかしくなかったほどに。
佐久間 保彦(さくま・やすひこ/神奈川県在住)
補足
山梨県山中湖村の林で起きた出来事について書きました。写真もご紹介します。雰囲気を味わっていただけるとうれしいです。
