第53弾「カヤネズミとの出会いから」


 恥ずかしながら、私がカヤネズミについて知ったのはつい最近のことでした。昨年の12月、研究室で管理しているビオトープ内で球巣を確認したことがきっかけでした。ビオトープは大学のキャンパス裏手に位置するのですが、身近な場所に哺乳類が、しかも草の上で生活するネズミがいたことに感動したのを覚えています。
 このビオトープで球巣が確認できたのは、当ビオトープが市内でも生物多様性の高い谷戸に隣接する形で造られていたからです。谷戸底の乾燥地にはススキやオギ、湿地部にはヨシやオギ等の高茎草本が混在する形で優占しています。こうした環境から現在この谷戸は、市内でも貴重なカヤネズミの生息地となっています。

調査対象地の谷戸

 しかし、今後公園化に向けて、現在まとまって残っているカヤ原の一部が失われてしまう可能性があります。私はこの貴重な生息地が失われないよう、保全に向け少しでも力になれればという思いでこの谷戸内での分布調査を始めました。 
 調査を始め、不慣れな藪こぎにも少し慣れてきた6月末、素敵な出会いがありました。身長を超すヨシ原の中で調査していると、膝丈くらいの高さの葉の上にオレンジ色の塊。もしや…と思い、再度確認するとカヤネズミとバッチリ目が合いました! そのクリクリとした瞳はとても可愛かったです。

初めて出会ったカヤネズミ

 動物園では見たことのあったカヤネズミですが、野生で会うのは初めてだったので内心は大興奮。でもカヤネズミを驚かせないように少し離れてから写真を撮らせてもらいました。本などで知識としては得ていた、葉の上でフリーズしている様子、葉の上を伝っていく様子を実際に見ることができ大変感動しました。ヨシの葉だったので葉が掠れる音もなく、静かに葉を伝っていく様子を見て、「本当に葉の上に乗れるほどの軽さなのだなぁ」ということを改めて感じました。

1時間後にもう1度見られた、ヨシに摑まるカヤネズミ

 日中に、しかも対面する形で会うことができ、この日は本当にラッキーだったなと感じています。カヤネズミの調査は初めてで、なかなか思うようにいかないことも多い中、このタイミングで姿を見せてくれたのは、私にはカヤネズミからエールをもらったように感じられました。彼らからのエールを受け取って、彼らの生息地を残していけるよう努力していきたいなとより強く感じたられた出会いでした。

湯浅 拓輝(ゆあさ・ひろき/慶應義塾大学学部生)