第57弾「海の中で葉っぱの上に巣を作る」


 カヤネズミに出会ったのは高校生の頃でした。WEBで見かけたカヤマップに地元の情報が無かったので探してみようと思い立ったのがきっかけです。しかし大学は海洋系に進み、この10年近く海をフィールドに研究しています。研究対象は海に生えている海藻。コンブやワカメと言えば馴染みがありますが、私の研究対象はヒロメというワカメの近縁種で、全国的にはまだまだ知名度は低いかと思います。

ヒロメ

ヒロメの葉に巣を作るヒゲナガヨコエビの仲間

 このヒロメの調査で海に潜っていると、面白い生き物に出会いました。あるヒロメの葉に違和感を覚えたのでよく観察すると、葉に何か虫のような物が着いています。ヨコエビの仲間です。
 カヤ原に様々な生き物が生息するように、海藻の生い茂る藻場(モバ)も様々な生き物が生息しています。そして、ヒロメが枯れ始める春先に出現するのがワレカラやヨコエビの仲間です。彼らはエビやカニと同じく節足動物門甲殻亜門軟甲綱(いわゆる甲殻類)に属しますが、エビカニ達が十脚目に分類されているのに対し、ヨコエビたちは端脚目に分類されており、簡単に言うとエビっぽいけどエビではない生き物です。しかし小さなエビっぽい生き物だと侮ることは出来ません。彼らの仲間は暑い地域から寒い地域、高い山の上から土の中や地下水、そして世界一深いマリアナ海溝のチャレンジャー海淵にまで生息しています。
 そんな訳で、海藻にヨコエビが着いている事自体はごくごく自然なことです。中には海藻の茎状部に穴を掘って棲む物もいるくらいです。

ヒゲナガヨコエビの巣

 しかし、今回驚いたのは、そのヨコエビが巣を作っていたことです。ヨコエビについては素人同然だったので、まさか葉の上に巣を作るヨコエビがいるとは思ってもいませんでした。このヒゲナガヨコエビの仲間は、Amphipod silkと呼ばれる分泌物で海藻の葉をつづり合わせて巣を作る習性をもっているそうです。今回は1匹しかいませんでしたが、この中で子育てもするようです。傍目にはすごく窮屈そうなのですが、扁平な体で巣の中をチョロチョロと動き回っていました。この生き物を見た瞬間ふとカヤネズミを思い出し、海の中にも似たような生活をする生き物はいるものだなと感じた次第です。

山西 秀明(やまにし・ひであき/すさみ町立エビとカニの水族館飼育スタッフ)